エアコンだけではない、夏の涼しさ

夏になると、

「茶室は涼しくて気持ちがいいですね」

と言っていただくことがあります。

もちろん、今はエアコンも使っています。

でも、夏の茶室で感じる涼しさは、それだけではないように思います。

夏になると、私自身も呂や紗の着物に袖を通します。

風鈴を出し、茶入や棗、茶碗、建水も、夏らしいものへ替えていきます。
ガラスのものや、平たい形の道具が少しずつ増えていきます。

水指は平水指に。

花入は竹籠へ。
風炉先屏風も、網代のものに替えていきます。

掛物には「瀧」など、水や涼しさを感じるものを選び、火がなるべく目に入らないように朝鮮風炉を使います。

お菓子も、葛や寒天など、見た目にも舌触りにも涼やかなものを用意します。

こうして並べてみると、夏は本当にいろいろなところに、涼しさを感じる工夫があるんだなと思います。

風鈴の音に耳を澄ませたり、ガラスに映る光を眺めたり、平水指の広い水面に目を留めたり。

葛や寒天のお菓子を口にしたときの、つるんとした舌触りにも、夏らしい心地よさがあります。

部屋の温度を下げてくれるのはエアコンですが、目に入るものや、耳に届く音、手に触れるものによって感じる涼しさは、また少し違います。

昔は、夏になると、ただ暑いと思っていました。

冷房の効いた部屋に入り、冷たいものを飲んで、早く涼しくなりたいと思うばかりでした。

でも今は、呂の着物を出したときや、風鈴を掛けたとき、ガラスの茶碗を手に取ったときに、

「今年も夏が来たな」

と思います。

暑さそのものは、今も得意ではありません。

それでも、目に入るものや、耳に届く音に少し心を向けるだけで、同じ夏が少し違って感じられることがあります。

涼しさは、室温だけで決まるものではないのかもしれません。

夏の茶室には、エアコンの涼しさと、目や耳で感じる涼しさがあります。

今年も一つずつ夏の道具を出しながら、ゆっくり夏を迎えています。