初釜の一服がひらく、新しい年の静かな幕開け

新しい年を迎えると、茶道では「初釜(はつがま)」が行われます。初釜は、新年最初の茶会であり、稽古始めを意味する重要な行事です。一年の無病息災を願い、新春を寿ぐとともに、あらためて一年の稽古に向き合う節目として執り行われます。茶の一年は十一月の炉開きから始まりますが、初釜はその延長ではありません。炉の季節に入ってから積み重ねてきた稽古の流れを受け止めつつ、新しい年を迎えた今、心を改め、席を正すための特別な一会です。華やぎの中にも、凛とした緊張感があり、祝意と厳粛さが静かに同居するのが、初釜の空気です。

床には、新春にふさわしい掛物とともに、結び柳に紅白つばきを添えた設え が置かれます。しなやかで折れにくい柳は、古くから無事や長寿の象徴とされ、それを結んだ結び柳には、人と人との縁がほどけることなく続いていくように、という願いが込められています。そこに紅白の椿を添えることで、祝意、清らかさ、そして陰陽の調和が整えられます。華美に走ることなく、しかし確かな意味をもって、新しい年の始まりを示す、初釜ならではの設えです。席中では、道具の取り合わせ、所作の一つひとつ、客と亭主の間に流れる間合いに、自然と意識が向かいます。

新年最初の一席であるからこそ、いつも以上に道具をよく見、一つの動作を丁寧に行い、相手の気配に心を寄せることが求められます。

初釜は、特別なことをする場ではありません。むしろ、基本を大切にし、これから始まる一年の稽古を、どのような姿勢で積み重ねていくのかを静かに確かめる時間です。

茶の湯は、言葉で心を語るものではなく、所作と場を通して、心の向きを正していくもの。初釜は、そのことをあらためて身体で感じる機会でもあります。

そして、この席で交わされる無言のやり取りや、さりげない心配りは、茶室の外へも自然とつながっていきます。

家族に淹れる一杯のお茶。

食卓に添える季節の花。

友人に送る短いひと言。

それらはすべて、初釜の席で大切にされる「相手を思い、場を整える」という心と地続きです。

結び柳が象徴する、しなやかに結ばれ続ける縁。

紅白椿が示す、清らかでめでたい始まり。

そのどちらもが、これからの一年を支える静かな願いとして、初釜の設えに託されています。新しい年が始まった今だからこそ、初釜の一服に込められた意味をあらためて胸に留め、日々の稽古や暮らしの中で、少しずつ確かめていきたいと思います。

この一年が、

無事に、滞りなく、

そして人との縁を大切にしながら続いていきますように。