旅の続きを、お稽古の中へ
最近、旅行の計画を立てる時間が、以前より少し長くなりました。
行きたい場所や食べたいものを調べるだけではなく、
「この近くに窯元はあるかな」
「お茶に使えそうなお店はないかな」
と、地図を見るようになったからです。
昔は、旅行に行くときに、お茶で使えるものを探そうとは思っていませんでした。
景色を見て、その土地のおいしいものを食べて、帰り際に気に入ったものがあればお土産にする。
そんな旅の仕方をしていました。
でも今は、旅行先が決まると、その土地にお茶につながるお店がないかを先に調べます。
窯元や器のお店はもちろん、和菓子屋さんや、土地の工芸品を扱うお店。
お稽古で使えそうなお道具や、その土地ならではのお菓子に出会えそうな場所があると、最初から旅の予定に組み込むようになりました。
以前なら、旅先で偶然見つけたものをお土産にしていました。
今は、
「どんなものに出会えるだろう」
と楽しみにしながら、その場所へ向かいます。
今回、伊賀で出会ったお皿も、その一つでした。
形も、色も、灰のかかり方もとてもきれいで、見た瞬間に心を惹かれました。
光が当たると、表面が小さくきらきらと光ります。
整いすぎていない形にも、どこかあたたかさがあって、何をのせようかと考える時間まで楽しくなるようなお皿でした。
旅先で何かを見つけると、つい、その先のことまで考えてしまいます。
この器には、どんなお菓子が合うだろう。
このお道具は、どの季節に使おう。
この干菓子は、次のお稽古で皆さんにお出ししたい。
どんな道具と合わせたら、その土地らしさが伝わるだろう。
そうやって考えていると、ただ物を買っているのではなく、その先のお茶の時間まで一緒に持ち帰っているような気がします。
旅先で出会った器やお道具を、お稽古で使う。
その土地のお菓子を、皆さんと一緒に味わう。
「これは旅先で見つけたものなんです」
そんな話をすると、そのときに見た景色や、お店の空気、交わした会話まで少しずつよみがえります。
お土産は、家に飾って旅を思い出すものだと思っていました。
けれど今は、日々の中で使いながら、旅の続きを楽しむものになりました。
茶道を続けるうちに、旅の目的が大きく変わったわけではありません。
きれいな景色を見たいし、おいしいものも食べたい。
ただ、そこにもう一つ、
お茶の時間につながるものと出会いたい
という楽しみが増えました。
以前なら通り過ぎていたお店や、気づかなかった小さなものにも、自然と目が向くようになりました。
器でも、お道具でも、お菓子でもいい。
旅先で何か一つ、心に残るものを持ち帰り、お稽古の中で使ってみる。
すると、その小さなお土産と一緒に、旅の景色や空気も茶室へ戻ってきます。
だから今の私にとって、旅は帰ってきたところで終わるものではありません。
お茶の時間の中で、何度もその続きを楽しめるものになりました。
茶道を始めてから、旅の楽しみが、また一つ増えたように思います。