風炉の支度、初夏の一服へ ― 茶室にめぐる季節のはじまり
茶の湯には、一年をふたつの季節に分ける大きな区切りがあります。
それが、「炉」と「風炉」です。

11月から4月までは、畳に切られた炉(ろ)を用い、寒い季節にふさわしいあたたかみのある茶室の空気をつくります。
そして、5月。
新緑がまぶしく、空気が緩やかに動きはじめる頃、茶室のしつらえも移り変わり、風炉(ふろ)の季節がやってきます。

風炉は、夏の装いのひとつ。
火元が茶室中央から少し離れ、釜の位置も高くなり、全体に風通しのよいすっきりとした印象になります。
炎の気配を抑え、涼を感じさせる工夫が、そこかしこに施されるのです。
ZenLabの朱雀軒でも、毎年この時期になると、風炉の支度を始めます。
灰を新たに調え、五徳の高さを確かめ、風炉釜を掛けて茶の湯の準備を整えます。
炉から風炉へと切り替わるこのときは、季節を一つ超えるような、凛とした緊張と清々しさに満ちています。
初風炉は、茶の湯における“夏の始まり”。
11月の炉開きが「茶の正月」とも呼ばれる新年の節目であるのに対し、
風炉開きは、爽やかな季節にふさわしい道具と心構えを整えて、あらたな一服に向かう転換のときです。
