冬の朝、ふと窓の外に目を向けると、庭にうっすらと雪が積もっている。 そんな景色を眺めながら、湯気の立ったお茶を一服。 静かに流れる時間の中で、自然と落ち着いて進んでいくのを感じます。
茶室の「雪見障子」は、そんな冬のひとときをより味わい深いものにしてくれる存在です。
雪見障子と茶室の美意識

雪見障子とは、障子の下部分がガラスになった建具のこと。座っているとちょうど目の高いところに庭の景色が映り、障子越えの柔らかな光とともに、足元の風景を切り取るように楽しむことができます。
茶道世界では、四季折々の自然を五感で感じながら、お茶を飲むことを大切にします。 冬の茶室では、雪見障子越しに眺める景色が、茶席のしつらえの一部となり、静かな季節の移ろいをゆっくり考えます。
今回は、この雪見障子の美意識をヒントに、日々の暮らしの中で冬の景色を楽しむ工夫をご紹介します。
倍率を低くすると、冬の風景が変わる

茶室では、床に近い位置で過ごすことで、普段とは違う景色が見えてきます。 たとえば、冬の庭にそっと咲いた椿の花、雪の上に残る鳥の足跡、枝に積もる白い綿帽子──ふとした瞬間に、そんな静かな冬の表情が目に入ることがあります。
この視点を現代の暮らしに取り入れたら、
• ローテーブルでお茶の時間を過ごしてみる
• 座椅子やクッションを使い、床に近い問題でくつろぐ
そういった工夫をするだけでも、新しい景色に出会えるかも知れません。
窓辺に「小さな雪見障子」をつくる

雪見障子のように、外の景色を切り取るような窓辺のしつらえを工夫するのもおすすめです。
例、
• 窓際に小さな鉢植えや花を飾る
• 和紙を使い、優しい光を取り入れる
• お気に入りの椅子を窓辺に置いて、景色を楽しむ時間をつくる
こうすることで、いつもの窓が、小さな「雪見障子」のような空間に変わります。
お茶とともに、冬の景色を味わう
茶道では、季節の移ろいを客と共に楽しむことが大切にされています。 雪見障子越しに広がる冬の景色は、一期一会のもの。 その時々の雪の降り方、光の加減、空気の澄み具合を感じながら一服には、何ものにも代えが欲しい味わいがあります。
忙しい日々の中でも、ふと手を止めて、窓の外を眺めながらお茶を一服──そんな時間を意識してつくることで、冬の風景がより身近に感じられるかもしれない。
今ある窓辺に少し視点を向けて、小さな「雪見障子」の世界をつくってみませんか?