十五夜に広がる、月と茶の静かな世界

夜空に輝く満月、皆さんはいつ最後に月をじっくり眺めましたか? 旧暦の8月15日、十五夜(中秋の名月)は、1年で最も月が美しいとされる特別な日です。夏が過ぎ、秋の澄んだ空気の中で月は一段と輝き、その幻想的な光は、古くから日本人の心を魅了してきました。



「掬水月手在」という言葉をご存じでしょうか? 水を掬えば手の中に月がある、つまり、遠くの月も手の中に感じることができるという美しい表現です。たとえば、庭の池に映る月を眺めながらのお月見。水面が揺れるたびに形を変える月には、また違った趣があります。月を掬うなんて、なんともロマンチックですよね。


茶道の席でも、お月見の趣向は大切にされています。例えば、月の絵が描かれた茶碗や、月に見立てた蓋置が使われたり、季節の移ろいを感じさせるススキや萩が花入に飾られたりします。そして、忘れてはいけないのが、お月見団子。丸い団子は、満月をイメージしたもので、見るだけで秋の風情が広がります。また、この時期にぴったりの秋の味覚、栗を使ったお菓子もお月見には欠かせません。栗入りの団子や、ほっくりとした栗のお菓子を一緒に楽しむと、より一層秋の味わいを感じられるでしょう。


もちろん、お月見は茶室に限りません。窓を開けて月を見上げるだけでも、日常の喧騒からふっと解放される瞬間が訪れるでしょう。月を眺めながら、昔の人々もこうやって月を楽しんだのかな、なんて思いを馳せてみるのも面白いかもしれません。

今年の十五夜は、ぜひあなたも夜空を見上げて、静かな時間を楽しんでみてください。月があなたの手の中にも映るかもしれませんよ。