お茶の世界では、お客様をもてなす方法が多岐にわたります。季節に応じて釜の配置を変えることで、お客様の快適さを考慮することもその一つです。 寒い季節の11月から4月にかけては、暖を取れるようにお客様に近い炉に釜を掛けます。そして、暖かさを感じる3月や4月には、炉の中の五徳を外し、春の景色を楽しむことができるようにします。 一方、暑くなる5月から10月にかけては、釜を風炉に移し、少し離れた場所に設置しますが、5月にはまだ肌寒い日もあるため、火が見える面取り風炉を使用して温もりを感じてもらいます。また、涼しさを感じ始める10月には、風炉をお客様に近づけて、暖かさを提供します。 このように季節感を取り入れた釜の位置の調整は、お客様の体感を最優先に考えるホストの心遣いとして表れます。細やかな配慮が施されたお茶の体験は、訪れるたびに記憶に残ります。お茶を提供すること以上に、お客様が心地よく過ごせるよう環境を整えることが、お茶の文化での真のおもてなしです。