千利休は、「夏はいかにも涼しきように。冬はいかにも暖かなるように」と言っています。この言葉に従い、茶道では暑い夏を涼しく過ごすためのさまざまな道具が使われています。
特に、夏に使用される抹茶碗の一つに「平茶碗」(ひらちゃわん)があります。平茶碗は、その名の通り、お皿のように平べったい形状をしているため、この名前が付けられました。夏に使われることから「夏茶碗」とも呼ばれます。
次の写真は、平茶碗の一例です。夏茶碗は、冷めやすい広くて浅い形をしています。この形状により、お茶が冷めやすくなり、暑い夏には冷めたお茶が美味しく感じられます。
もう一つの夏の道具は「平水指」(ひらみずさし)です。水指は、釜のお湯の温度を調節したり、茶碗や茶筅をすすいだりするのに使う水を貯めておく道具です。平水指は、広くて浅い形状をしており、水面が広く見えるように設計されています。これにより、水がたっぷりと入っている印象を強く与えます。浅い胴体は、水の反射や光の反射を最大限に引き出し、キラキラと輝く水面を演出します。この視覚的効果が、涼感を演出し、水の冷たさを強調します。
また、ガラス製の茶碗や水指もあります。ガラス製の道具は、透明感があり、見た目にも涼しさを感じさせます。光を通し、キラキラと輝くことで、さらに涼しさを引き立てます。夏の茶道では、こうしたガラスの道具を使うことで、視覚的にも涼しさを楽しむことができます。
さらに、茶道具の中には、風炉(ふろ)や花入(はないれ)、襖(ふすま)、菓子器(かしき)など、夏に使用する際の涼を感じさせる工夫が施されたものがたくさんあります。風炉は、火を炉の場所より遠くに移し、客に暑さを感じさせないようにします。花入や襖も、涼しげなデザインや素材が使われており、視覚的に涼を演出します。菓子器には、季節感を反映した涼しげな形状や色合いが施され、夏の茶席をさらに爽やかに彩ります。
暑い夏、涼しさを演出するこれらの道具を取り入れて、茶道の魅力を存分に楽しんでみてください。心地よい涼を感じながら、優雅なひとときをお過ごしください。