春本番、茶室で楽しむ野点の趣—吊り釜と旅箪笥で味わう季節の風情

春の訪れを告げるやわらかな日差しが差し込み、そよ風が冬の名残を優しく吹き払う頃。ふと、野点を楽しみたくなりませんか?広い野原や公園で抹茶を点て、春の空気を味わうのは格別ですが、準備が大変なこともあります。そんなときは、茶室の中で野点の趣を取り入れてみるのも一案です。

炉に吊り釜、旅箪笥で演出する野点の趣

春とはいえ、まだ炉(ろ)を使う季節。ここに吊り釜をかけると、茶室に野趣が生まれます。鎖で吊るされた釜がゆらゆらと揺れる姿は、風を感じさせ、屋外での茶会を思わせるもの。通常の据え釜とは異なる趣があり、茶席に新鮮な変化をもたらします。

また、旅箪笥(たびだんす)を取り入れるのもおすすめです。旅箪笥は、持ち運びができる茶道具収納箱で、茶器や水指、柄杓、蓋置などが収められています。本来は旅先や野外での茶の湯のためのものですが、茶室で使うことで、軽やかで遊び心のある点前が生まれます。春の明るい雰囲気にもぴったりで、気分も自然と和らぐでしょう。

障子越しの光と春の息吹を感じて

屋外での野点は心地よいものですが、茶室の中にも春らしさを取り入れる工夫はたくさんあります。そのひとつが、障子越しの光を活かすこと。春の日差しは、冬の鋭さが和らぎ、やわらかく温かみのある光となって室内に差し込みます。障子を通して広がる光が、茶室にふんわりとした春の気配を添えてくれるのです。

窓を少し開けて春風を感じたり、床の間に春の花を生けたりするのもおすすめです。道具の取り合わせにも工夫を加え、淡い色合いの茶碗や花をモチーフにした棗を選べば、さらに季節感が高まります。

春の茶席を彩る和菓子

春の茶席に欠かせないのが、季節の和菓子。桜や菜の花をかたどった生菓子、うぐいす餅や桜餅など、この時期ならではの甘味を楽しむことで、より深く春の訪れを感じることができます。口に広がるやさしい甘さと、抹茶のほろ苦さが調和し、心まで穏やかになるひとときです。

茶室で味わう春の野点

野点といえば屋外で楽しむもの、という印象がありますが、茶室の中でもその趣を感じることは十分に可能です。吊り釜をかけ、旅箪笥を用いた点前を楽しみ、障子越しの光とともに春の空気を感じる—そんなひとときを大切にしながら、春の茶の湯を味わってみてはいかがでしょうか?

茶室で過ごす春の時間が、心に残るひとときとなりますように。